ランチのあとには

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ことの始まりは2週間前に遡る。旧友から突然 「急で申し訳ないんだけど、4月から姪のこと預かってくんない?花ん家広いし、どうせ暇してるんだから、いいでしょう?荷物郵送しといたから受け取っといてー。バイバイ」 と電話があり、直後に段ボールやら家具やらを乗せたトラックが家の前に到着した。”荷物”を”郵送”したと聞いたはずだったが、これは”引っ越し”の間違えではないのか。  幸いにも花は27歳の一人暮らしにはとても広すぎる、3階建て庭付きの一軒家に住んでいるので、今日から1人住む人が増えても物理的に何か困るということはない。  やられた、と思った。海外にいるはずのヤツから電話が来た時点で何かあるとは思ったが、さすがに予想外だ。そして断るかどうか悩む時間さえ与えないこの推しの強さ、というか狡猾さは未だ健在のようである。  ーピンポーンー 『マート引っ越しセントラルでーす。』  もう、一旦ヤツのことは頭の隅に追いやり、とりあえず引っ越し業者には10分ほど待ってもらうように言う。  ひとまず、2階の1番奥のゲストルームとして作った部屋に置いてもらうとするか。  ざっと埃を払い、部屋に目立った不備がないことを確かめ、あとは業者の方に任せればいいか、と庭先で待ってもらっていた引っ越し業者に声を掛ける。  もう一度言うが、この家は27歳の独身男性が一人で住むにはとても広すぎる。庭付き、3階建て、トイレとバスは各階に一つずつあり、一階は和風、2・3階は洋風と、間取り・デザイン・機能性、どこをとっても素晴らしく家主のこだわりが散りばめられているのがよくわかる。そう、この家は花が2年前に建てたばかりの豪邸なのである。
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