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羽住 郁。
高校に入学して、同じクラスになった彼。特別背が低いとは思わないが、クラス一の長身である大雅に比べれば十センチは小さいだろう。
何よりも体格が違う。がっしり型の大雅と、実際にはそれなりに筋肉質のようだが、一見華奢に映る郁の細身の身体。
男子校で教室に男ばかり四十人が常に詰め込まれているのは、最初のうちはどうにも妙な気分だった。中学までは共学で体育など男子のみの授業もあったが、あくまでも一時的に過ぎなかったからだ。
「石和くん。正式にクラス委員を決めるまで、暫定で代表を引き受けてもらえませんか?」
「わかりました」
入学式の後のホームルームで、担任の八木の依頼を大雅はあっさり承諾した。
大雅の姓の石和が、このクラスでは出席番号一番だったからだろう。席も最初は番号順なので、窓側の一番前だ。人前に出るのが苦手というわけでもなく、特に支障もない。
それよりも、八木の丁寧な口調に驚いた。高校というのは、生徒を大人扱いしてこういう風潮なのか!? とカルチャーショックを受けたものだが、あくまでも八木が例外なのはすぐに判明した。
そういえば小学校入学当時の女性教師も言葉遣いは丁寧だったが、あれは「一年生の担任」として敢えて作ったものだろう。しかし八木の場合はもともとの個性のようだ。
大雅ほどではないが大柄な彼は、細やかな心配りの行き届いたタイプらしかった。
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