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年齢も知らないのか、と珠美にあきれられたことを思い出し、尋ねてみた。
「32です」
「じゃあ、私の3歳上ですね。私、弟さんと同い年みたい」
「そうじゃないかと思ってました」
久保さんはちょっと微笑んだ後、アイスコーヒーをひと口飲んで、息をつく。
そうじゃないかと思ってた?
少し気になる言い方だった。
「久保さんの地元はこちら?」
ふと、尋ねる。
「ええ、そうですよ。八福寺第一中学校に通ってました」
「私は第二。小学校も八福寺ですか?」
八福寺小学校はマンモス校で、地域によって学区が違い、中学生になる時に進学先が第一から第三まで分かれるようになっていた。
「はい、八福寺小学校でした」
「一緒に通ってたこともあるんですね。なんだか不思議」
不思議な縁を感じる。
彼もそう思ったのかどうかわからないけれど、優しく微笑む。
「じゃあ、弟さんとは小学校の……」
そう言いかけた時、お話やのインターフォンが鳴った。
「ごめんなさい。ちょっと外しますね」
「お客さんなら、俺、帰りますから」
腰を浮かせる久保さんに「大丈夫ですから」と言って、入り口に向かう。
定休日の来客はかなり珍しい。もしかしたら配達かもしれない。
そんなことを考えながら、引き戸を開けると、見知った女性が立っていた。久しぶりに会う彼女は、私を見るなり、笑顔になる。
「お久しぶり、幸子ちゃん。ごめんね。近くに来たからちょっと顔が見たくて」
彼女はそう言うと、顔の前で両手を合わせた。
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