いらないひと

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「それから二人で追い詰めようって誓ったの」  女達は心底愉快そうに、いたぶってくる。お前が悪いと指を指す。  確かに既婚者である事実は隠していたが、離婚した後、浮気相手とは結婚するつもりであった。  隠し通せる、全て上手くいく。それは甘い幻想に過ぎなかったのだ。  裏切られた女達は、ほくそ笑む。  嵌められたと無意識に呟けば、女達は罵った。躊躇なく踏みつけるように。 「人を不倫に巻き込んでおいて虫が良すぎ」 「被害者は私たち。間違えないで」  剰え私の不貞を捏造して慰謝料なんて、面の皮が厚いわね。愛想が尽きたわ。  後ろ姿で証拠にもならない写真を破り捨て、離婚届を抱きしめる妻に縋ろうとした。手を伸ばし、彼女の服の裾を掴む。  だが、すぐさまに、乾いた音と共に、叩き落とされた。妻の綺麗な爪が、司の手の甲に当たり、痛みが走る。  妻だった女は凍てついた瞳で射貫いた。 「浮気をするような夫は、いらない」  吐き捨てられた、終わりを告げる言葉に打ちのめされ、司は力なく項垂れた。
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