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そうして、三年が過ぎた。
既に成長期を過ぎてしまっていた私の身長はこの三年の間に少しも伸びなかったが、弟の方はちょっとした仕事なら任せられるくらいには大きくなった。けれど、中身はまだまだ子供のままだったのだ。
私は、それをちゃんと分かっていなかった。
その年の雨季は、例年になく多くの雨が降った。川の様子を見に行って戻ってきた彼は、しばらくは近づかない方が良さそうだと言った。普段は雨季にも沈まない中州が、このままいくと沈みそうなほどの水量になっているのだという。
それを聞いた時、私は思わず「あそこにはお母さんの――」と口走っていた。そこまで言ったところで、はっとして口を噤む。
「あの中州に、君のお母さんの何かがあるのかい?」
彼はそう尋ねてきたが、私は黙って首を左右に振った。
あれのことは、忘れてしまった方が良い。どのみち、掘り返すつもりもなかったのだ。今回の大雨で流されてしまうのなら、それはそれで良いのかもしれない。
そんな私の内心を読み取ったわけでもないのだろうが、彼はそれ以上、重ねて問うてくることはなかった。
話はそこで終わり、私はそのことに胸をなで下ろした。
その時の私達は、気づいていなかった。弟が、その会話を聞いていたことに。
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