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「東、リコ」
ぴんとした返事と起立のあと、ひとりの女子生徒が壇上に登っていく。
いつもは騒がしい体育館が静まりかえり、ひとり、またひとりと名前が呼ばれていくのを傍らで眺めていた。
卒業証書を受け取り、並んでいる教員の横を通って席へと戻る表情は、どこかりりしく、どこかはかなくて。
それぞれの横顔を見るたび心に留まっていた記憶がじわりじわりと蘇ってくる。
池田さん。
周りとの間にどこか線を引いているような雰囲気だったけど、3年生になって急に皆と打ち解けるようになってたね。
小波くん。
「47都道府県全部行ってやる!」って、3年間の夏休みを使って自転車で日本一周とか、その行動力に脱帽したよ。
東さん。
ああ、やっぱり泣いちゃった。大好きな人と離れるのは辛いよね。でもね、三五君が沖縄に行っても、二人なら大丈夫だよ。
福川くん。
文化祭で見せてくれた落語も、修学旅行の夜に即興でやってくれた漫才も面白かったのに、国語のテストは最後まで赤点ギリギリだったのはなぜなの?
三上さん。
入学したときは心がすっぽりと抜けたように元気なかったのに、サッカー部のマネージャーを始めてから笑顔が見えるようになって、ほんとよかった。
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