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近頃、何も楽しいことが無い。 というか、産まれてから俺の人生楽しいことなどあっただろうか……? ただ、何も感じず生きているだけ。 心にぽっかり空いたままの感触…… それが何なのかもわからない。 彼女と出会ったのは、人生に退屈していた頃だった。 どん! 店ですれ違いぶつかってしまった。 「ちょっと!どうしてくれるんですか?私の推しのグッズが……買ったばかりなのに」 彼女は、ひどく動揺している様子でグッズに目を向けていた。 「ああ、すいませんでした」 面倒くさそうな彼女に適当に謝っていた。 そんなに悲しむものでもなさそう、俺にはいいとは思えない。 「これは、唯一の私の楽しみなんですよ」 これが俺と彼女との出会いだった。 それからは、弁償で推しグッズを買いに一緒に行ったり、俺も彼女に会っていると退屈しなかったから気がつくと会いに行っていた。 俺は彼女と会っていると、ぽっかり空いたままの心が埋まっていくような気がしていた。 ♢ 「う、う……う」 最近は目が覚めるとハァハァと、胸が苦しくなって起きる。 いつも、とてもリアルな夢だ。 それは、彼女に会う度にうなされる回数も増えていく……そのうち、俺の記憶にも変化があり、昔の記憶が蘇る。 彼女を失って苦しかった過去…… そして、再び彼女と再会出来た喜び それぞれ違う気持ちが同居して複雑な気分になっている。 俺が記憶を取り戻す頃には、彼女とは仲のいい友達になっていた。最近、付き合っている彼とうまくいってないようだ。 彼女はいつも何かある度、俺に相談してきていた。時には、泣いているときもあった。 彼女はへんな男に引っかかっていた。 男には、他にも二人女がいて、その内一人は本命で本命と上手くいっていないときに、彼女にお金や身体を求めたりしていた。 そして、昔と同じように、彼女は自分の全てをかけてその男を愛していた。 男は彼女を愛していないのに、彼女は男をひたすら愛して働いたお金は、ほぼ、持っていかれてるし、毎日ギリギリの生活で心の拠り所として推しのイケメングループを密かに応援して癒されている。彼女の現実逃避の方法。 男と会ってないときは俺と一緒に過ごしていた。 その日も彼女に会いに行った。 彼女は、泣いたのか辛そうにしていた。 「あ、じん、来てくれたんだね、私ね、別れちゃった……」 そう彼女は言うと限界だったようで俺と会うなり気を失って倒れた。 「おい!しおり?大丈夫か?しっかりしろ」 俺は彼女を抱き抱えて部屋の中に入りベッドに寝かせる。
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