サイドストーリー[1]

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サイドストーリー[1]

「娘のルイーズが行方不明になった」 王様は家来たちにそう説明した。 だが実際に行方不明になったのは娘のルイーズではなく、息子であるクリストファーの方だった。 クリストファーとルイーズは双子の兄妹で、瓜二つだった。 あまりにも似ているため洋服はいつも同じ物を着させられていた。 その日は空が晴れ渡って春の訪れを感じる少し厚みのある風が吹いていた。 城から少し離れたところにある池のほとりで遊んでいた一瞬の間だった。クリストファーは忽然と姿を消した。 王はすぐに双子の一人がいなくなったことに気付いた。 そして消えたのがクリストファーだと気づくと、「ルイーズがいなくなった」と家来たちに言った。 瓜二つな二人の見分け方を、王は唯一知っていた。 それはクリストファーの首筋にあるホクロだ。王は双子の一人がいなくなったことに気付くとすぐさまもう一人の首筋を確認し、いなくなったのはクリストファーだと確信した。 そして王は万が一のために、娘のルイーズを行方不明として捜索を指示したのだ。 もし息子のクリストファーが見つからなければ、王の遠い親戚であるサージャリーが次の王族候補になってしまうためだった。 クリストファーは結局見つからず、その後何ヶ月もの捜索が続いたがついに打ち切られることとなった。 双子の妹であるルイーズは王子として生きていくことになった。 王は”ルイーズ”が消えた形見と称して、”クリストファー”の名前をルイに改名すると発表した。 ルイーズは王子となり、男の子としての作法を教わるようになった。 馬の乗り方、剣の使い方、言葉遣いまでも男の子を演じきった。 しかし7年経ったある日、それまで王の言いなりだったルイーズは十二になる歳に爆発した。 「お父様、なんで私は女の子なのに、王子として生きていかなきゃいけないの!?」 「ルイーズ、辛抱してくれ。おまえのためなんだ」 「私、もう嫌よ!男の子のフリをするなんて嫌!綺麗なドレスだって着たいし、髪も伸ばして、くるくるにしたいのに!」 「ルイーズ、父の言うことを聞きなさい。もしもお前が姫だとわかったらサージャリーに王族の権利を乗っ取られて、私たちはこの城から追放されてしまうかもしれんのだぞ」 「私は追放されてもいいわ!私のためじゃなくてお父様のためでしょ!」 ルイーズは城の外へ飛び出すとそのまま港の方面へ馬を走らせた。
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