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臣人は言葉に詰まった。
その原因を作ったのは紛れもなく自分だと思っていた。
だが、バーンの言葉は止まらなかった。
「輪廻転生の輪からもはずれてしまってる………。それに、」
臣人は叫ぶような声でくいさがった。
「そやけど!!あの時、わいにもっと力があったら、結果は違ってたかもしれへん」
(こないにまで、お前を。こないにまで、お前を苦しめずにすんだんやないんか?)
最後は言葉にならなかった。
言葉そのものを飲み込んでしまった。
7年前、あの洋館の庭で泣き叫びながら、彼女を抱きしめていたバーンの姿が甦っていた。
バークレーの自宅で真っ暗な部屋の中、ソファにひとりたたずんでいたバーンの姿を思い出していた。
死んだラシスの顔もバーンの泣き顔も脳裏に鮮明に焼きついていた。
そんなことを思い出しながらバーンの表情を表さない横顔を見ていた。
7年間ずっと心に秘めていたものが言葉になった。
後悔し続けてきたことが、初めて言葉になった。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
あの時の決心が揺らぎそうになっていた。
自分がバーンのそばに居続ける意味。
自分がバーンと行動を共にする意味。
彼が日本にいることの本当の目的。
寄せては返す波音だけが遠くから近くから聞こえ続けた。
時折、足元まで迫ってくる波音に彼らは包まれていた。
それ以外の音は聞こえなかった。
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