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重苦しい沈黙が続いていた。
バーンは急に首を横に振った。
「ラティが死んだのは臣人のせいじゃない…」と、そう静かに告げた。
こんな臣人の姿を初めて見た。
こんなに思い詰めていたとは知らなかった。
今まで付き合ってきて、初めて見る姿だった。自分と同じように、臣人も苦しんでいるとは気づかなかった。
(俺がこんな“眼”さえ持ってなければ。
力が100%覚醒していたら…?
あの時、この力を100%使いこなせていたら…?
もしかしたら、彼女を救えたかもしれない。
生きていなくても魂だけは。
せめて、魂だけは救えたはずなのに…)
バーンも飲んでいた缶を片手で握りつぶしてしまった。
つらそうにその手を見つめていた。
今でもこの両手には、あの時の彼女の身体の重みが残っていた。
次第に冷たくなっていく身体をただどうすることもできずに抱き締めていた。
後悔だけしか残らなかったあの日。
生きている彼女を見た最後の日。
自分の17回目の誕生日。
バーンはそのまま眼を閉じた。
臣人は目の前の真っ暗な海を見つめていた。
黙ったまま、ひと言も発することはできなかった。
ただ、心の中で何かが叫んでいた。
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