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「夜の海もなかなかええやろ?」
砂浜に座りながら惚けているバーンに臣人は後ろから声を掛けた。
「昼の海ならもっと!!楽しい思いもできるのに。ああ、残念や。水着の姉ちゃんとか、水着の姉ちゃんとか!水着の姉ちゃんとか!!」
握りこぶしをフルフルさせながら力説する臣人に、おまえそれしかないのか、という顔で(もっともそんな顔も臣人には見えもしないが)背後に視線を送った。
夕方、テルミヌスで一杯飲んでいるところに臣人が乱入してきた。かと思うとそのまま引きずられて車に乗せられて、無理矢理連れ出されてしまったのだ。
そのまま車に揺られること、2時間半。
見たこともない海岸に連れてこられていた。
「ったく。せっかく夏休みやっつうのに、日がな一日テルミヌスにばっかり入り浸って不健康なやっちゃ」
「…………」
「どや?少しは気分転換になったか?」
「…………」
「まあ、立秋も過ぎたから土用波で高いけどな」
人差し指で鼻の下を何回かさする。そしておもむろに車の方に歩き出し、カチャッとトランクを開けた。
浜辺に乗り付けられた車は臣人には似つかわしくない小型でかわいらしい赤い車だった。
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