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また、しばらくの沈黙。
バーンは初めて自分の目の前に現れた臣人のことを思い出していた。
あの頃の臣人は抜き身の刃のような危うさがあった。
近寄ることすら拒むような雰囲気と触るものを傷つける、目に見えない尖った何かを纏っていた。
関西弁すら喋っていなかった臣人を思い出していた。
それは死者の魂が愛するものたちの元へ帰ってくる、日本のこのお盆という季節のせいかもしれなかった。
「……臣人」
「んー?」
車の窓に手をかけ、車体により寄りかかりながら生返事をした。
「長いな……」
「何がや?」
グイッとビールを飲む。暑さのせいか、さっき一口目を飲んだ時より、ぬるくなっている気がした。飲んでいるそばから汗になって噴き出してきそうだ。
「おまえとの付き合いがさ、」
「なんや急に、かしこまって。気持ち悪ぅ」
ちょっと臣人は照れ隠しに頭をかいた。
「High Schoolの頃からだから。7?8年弱の付き合いに…なるんだな。」
何を思ったのか、昔のことを想い出すようにそう呟いた。
いつものバーンならこんなふうに昔話はしない。
彼にとって『過去』の話はつらいことだらけなのだから。
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