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「そりゃ、非道いでぇ。わいかて小さい頃は神童の誉れも高かったんやからな。『生き神さま』なんて言われてな」
上がってしまったテンションとは裏腹に、バーンの背中を見ながら、子供の頃を思いだしていた。昔のことを思い出すたびに心の奥底が疼いた。
昔の自分は今の自分から全く想像ができない別人だったのだと。
「まあ、確かにそうやった時期もあったけど」
物心ついた時から、自分は円照寺にいた。あの場所が自分の『家』だと疑わずに少年時代を過ごした。
何の疑問も感じずに術と技の修行に明け暮れた日々。そこに両親の姿はなかった。
記憶に残っているのは厳しい祖父の姿。そして、自分は知ってしまった。帰る場所がないことを。本当の『家』はここではないことを。
「あの頃は、ちゃんと袈裟を着てたし……とても同い年には見えなかった」
バーンの言葉は止まらなかった。
「そうか? じじいの代わりにアメリカに来て仕事してたときやったな。お前に会おうたんは、」
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