旅立ち 12

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旅立ち 12

それから、たわいも無い話ばかりしていた。 段々と、言葉が減る。 「…俺さ」 「うん…」 「美和ちゃんのこと、好きだ。」 「…私も、一ノ瀬くんが、好き…。大好き…。」 「こんなに好きなのに、離れないといけないなんてな」 「…私、遠距離でもいいよ?」 「…自分で選択して離れていくのに、付き合ってくれだなんて言えない。」 「……。」 「俺、美和ちゃんを縛りたくない。」 「一ノ瀬くん…」 胸の奥がいっぱいになる。 それ以上、何も言葉が出ない。 「好きなやつなんて、すぐに出来るさ!」 「一ノ瀬くん…。そう、だね…。頑張ってね、東京。」 「…ああ。」 「電話、ありがとうね。」 「ああ。じゃあね。」 電話は切れた。 美和は茫然としていた。 終わってしまった。 胸が苦し過ぎて、涙が出ない。 涙なんて、簡単に出てくれた方が、よっぽど楽なのに。
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