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解夏 5
「……矢崎さん?」
花火をぼうっと眺めていた美和には聞こえない。
花火の音が大きいのだ。
「矢崎さん!」
「!」
声がする方を向くと一ノ瀬だった。
「一ノ瀬くん!……花火大会、行かなかったんだ。」
「矢崎さんこそ。彼氏とかと行ってたのかと思ってたよ。」
「彼氏とか…そういう人、いないから…」
目を逸らして答えた。
「え?」
花火の音が大きくて聞きづらい様だ。
美和は一ノ瀬の耳のあたりに自分の顔を近づけた。
「だから、彼氏とか、そういう人、いないってば!」
「一ノ瀬くんこそ、彼女とかと行かなかったの?」
「彼女とか、今そういう人いない。」
一ノ瀬の顔も美和の耳に近付いていた。
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