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月光 12
「月が…」
一ノ瀬がぽつりと言った。
今日は満月だった。
「月?」
美和も月を見上げる。
「今日の月…綺麗だな。」
「…うん。綺麗…。」
「矢崎さんのせいだな。」
一ノ瀬が美和を見て笑う。
「え…何で…」
笑って誤魔化そうとするけど、上手くいかない。
「いつもこんなに綺麗じゃない。」
美和は何も言えない。
何も言わずに、2人とも月を見ていた。
「…くしゅん!」
夜風に冷えてしまった美和はくしゃみが出た。
「…帰ろうか。」
一ノ瀬は美和の手を握って駅に歩き出した。
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