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風花 6
今日も美和がカフェスペースのカウンターで勉強していると、一ノ瀬が隣の席に座った。
「一ノ瀬くん。今日も赤本でタワーが出来てるのね。」
くすくす笑いながら一ノ瀬の大量の勉強道具を見る。彼の鞄には一体どれだけの量の物が入っているのだろうか?
「美和ちゃんは?共通テスト対策?」
「うん。そろそろ慣れておかないとね。」
一ノ瀬は最近、美和を名前呼びするようになった。
学校では変わらず「矢崎さん」と苗字で呼ばれている。
「こないだ、田中さんに一ノ瀬くんとどうなの?って聞かれちゃった。」
思い切ったことを言ったと思う。
美和は少し緊張する。
「俺も。」
「えっ?」
「美和ちゃんと手繋いでるの、目撃してたらしくて。」
「一ノ瀬くん、何て答えたの?」
「別に良くね?って」
「……。」
「田中には関係の無い話だし。」
「…そっか…。」
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