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スノードロップ 1
冬休みに入った。
クリスマスイブの日、香織が美和の白いダッフルコートを借りに来た。
デートに着ていきたいらしい。
一ノ瀬からは連絡が無い。
12月に入って以降、彼が学校に来る日は減ったし、予備校でも姿を見ない。
講義は出ているのだろうけど、美和の行動範囲に現れることは、あの雪の日以来無かった。
クリスマスイブだというのに、いつも通りに家で夕食を取る美和に父親が絡んできた。
「美和はデートに行かないのか」
「別に…」
「そうかそうか…」
酔っ払った上に娘に彼氏がいないと察して父親は上機嫌だ。
神経を逆撫でされた以外の何物でも無い美和は急いでご飯を食べて自室に籠った。
番号を交換したけれど、一度もお互いにかけた事の無い彼の番号。
番号を見つめることしか出来ない美和は、仕方無く勉強を始めた。
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