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絶対に秘密。
また見てしまっている。
右手親指、第一関節の上にある、平たい形のもの。
正方形の角を少し丸くして、綺麗に切り取られたような、かまぼこのような形。
「うん? わからない?」
家庭教師の上村雄二が私の顔を覗いた。
その瞬間、私は我に返り、動揺する。漫画の単行本くらいの厚さの、開かれた青い問題集。
開かれたページには数字や記号が並んでいる。
だめだ、集中しなくては。
そう自分に言い聞かせ、その数字や記号を訝しげに見つめた。
わからないフリをしなくては。
だって、親指の爪に見とれてた、だなんて言えないし。
言ったところで、先生は私のことを変だと思うだろう。
「うん?この問題がわからない?」
先生が私の視線にある問題を指差した。
あぁ、違う。人差し指じゃないんだってば。私が好きなのは……。
でも、人差し指なら大丈夫。これなら集中できる。
***
学校の売店で買ったピーチーティーの紙パックに、ストローをさしながら嬉しそうに優子は言った。
「ねぇ、シオリちゃん、この前ネットフリックスで配信された、『魔法少女ミカるん』
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