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「あのさー、葵がお前のこと好きなんだってー」林タケルがからかうような口調で平田に言った。
林タケルのすぐ後ろで同グループの四人が笑いを堪えている。
塩田葵はその隣で明らかに不快感を持った顔をしている。
どう見ても、平田はからかわれている。さっきまで林達はスマホでゲームをしていた。
そのゲームで、負けた塩田葵の罰ゲームで平田に告白ということは明らかだ。
平田は「あっ。えっ、と……」と言いながら固まっている。
「ちょっ、ほんと無理―」塩田葵がそう言って、他の五人が堪えきれず笑い出だした。
「ちょ、葵、お前ムリは無いだろうー」
林タケルがそう言って、元のグループの方に戻っていった。
あぁ、つらい。痛々しい。平田、罰ゲームにされて、切なすぎる……。
平田は自分のカバンを持ち、静かに教室を出ていった。
そんな平田に気付きもせず、林達はもう別のゲームを始めて盛り上がっている。
さっきの平田の存在が最初から無かったかのように。
あぁ、残酷だ。世の中は残酷。 それでも、生きていくんだ。
優子と一部始終、その光景を見ていた私達はなんとなく気まずくなった。
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