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そう言って先生は頭を下げた。
「じゃあ、僕の友人の山本が来週から来ますので、よろしくお願いします。では、失礼します。シオリちゃん……。元気でね」
そう言って先生は、最後の一言でようやく私を見て、玄関のドアを開けて外に出た。
「あらーほんと寂しくなっちゃうわ。上村先生、良い先生だったわねー。次の先生はどんな方かしらー」
母親は先生が来た時はいつもそうなるように、上機嫌の声のトーンで言った。
「うん。なんか、疲れた。今日は早く寝るね」
「あら、最後だったからいつもより、今日はちょっと長かったもんね。先生、しっかり勉強教えてくださったのね。シオリ、今からお風呂入る?」
「明日の朝はいる」
そう言って自分の部屋に入り、ドアを閉めた。
終わった。
あの顔。先生の見たことがないような、変な生き物とかエイリアンを見るような顔。
軽蔑とか恐怖とか、そんなものが入り混じったような表情。
先生のあの爪。もう二度と見れない。大好きな数センチのもの。
終わったな。
あんなことを先生にぶちまけてしまった。私の内なるものが、ドバッと、勢いよく。
ベッドにうつ伏せになって倒れ込んだ。
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