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電車が停止し、ドアが開き、また電車が動き出す。周りにはスマホをいじっている二十代の男性、三十代くらいの女性、五十代くらいの男性。新聞を読んでいる七十代くらいの男性がいる。数分するとまた電車が停まり、外国人旅行客が七人乗ってきた。
静かだった車内がその旅行客達の話し声で溢れた。
それでも電車は走る。走行方向に向かって。
数分すると駅に着き、大きな声で話し続けている旅行者達の間をすり抜け、電車を降りた。
証明しなきゃ。
改札を出て方向を確認する。確か、この辺りにファミリーマートマがあって、それを超えた辺りのマンションの、三階の三〇六号室。
私は走り出した。
ファミリーマートを発見し、その数メートル先に佇むベージュ色の外壁のマンションに
向かって走り出す。
そうだ。おかしくない。
先生のあの目つき、先生と白いワンピースを着た女の人の後ろ姿、先生の爪。
「はぁ。はぁ」
息切れがする。
頭の中に走馬灯のように、先生の視線とか、あの爪とか、ミカるんの紙袋とか、岸田の笑顔とか、平田の変な視線とか、そんな映像が倍速で再生される。
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