黒蝶(くろちょう)

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 マンションの前に着き、エントランスのドアを開け、三〇六のインターホンを押す。 「はい?」 「相原シオリです……」  解錠され、エレベータに乗りこむ。顔や首や背中にまで汗が流れていた。  エレベーターが開き、三〇六室の部屋に小走りで向かう。 【三〇六】  ドアの前に立ち、インターホンを押す。  開かれたドアの先には目を丸くした平田が立っていた。 「どっ、どうしたの? あっ相原さんっ」 「おじゃまします。おじゃましていいよね……?」  そう言って玄関に足を踏み入れる。 「あっ、うっうん。ぼっ、僕の部屋、奥だけどっ、あっこれ、スリッパ、どっどうぞっ」  平田に差し出された、お婆ちゃんとが好きそうなヨモギ色の花柄のスリッパを履いて、 平田に案内されて、平田の部屋に向かう。 「あっ、あのっ、どうしたの? えっと、相原さんもミカるんが好きになったとか……?」  そう言って平田は自分の部屋のドアを開けた。  平田の部屋は壁一面にミカるんのポスター等が貼られている。  ミカるんのフィギアが七体ほどケースに入れて飾られている。  部屋のドアを閉めて、平田に向き直った。 「平田、紙コップ、ある?」
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