黒蝶(くろちょう)

7/53
前へ
/53ページ
次へ
 至って普通で、平均的なその他のグループ。  そして平田と安内みたいに皆からちょっと下に見られている二人。  この教室内はこんな感じで成り立っている。そんなことを考えていると始業のチャイムが鳴った。  いつも通り、均一で、つまらない、音色だ。 *** 「シオリ、今日先生にイチゴのタルトケーキを出そうと思うんだけど、先生、甘いもの嫌いじゃなかったわよね?」 「えっ?」  スマホで見ていたユーチューブの停止ボタンを押し、私は顔を上げ、私の母である相原玲子を見た。  私の父親、相原仁志は、私が高校に入学してから上海に単身赴任中だ。  そのため、現在、母親と私の二人暮らしである。 「先生、甘いもの大丈夫だったわよね? 今日ケーキ出そうと思うの」  母親はケーキを載せた皿を私の方に向けて見せた。  白いシンプルな円形の皿に載せられた、赤いストロベリーのタルトケーキ。  白と赤のコントラストと突き出した苺の、その隙間なく寄せ集められた姿になんだかゾッとした。人の欲が寄せ集まったらこんな感じになるのかもしれない。 「うん。先生、前にケーキが好きって言ってた。チーズケーキが好きなんだって」
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加