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そう泣きながら頭を抱える男性の姿は余りにも悲痛でどう言葉をかけていいのか迷ってしまい自分がいれたお茶の水面を眺めるしか出来ない。
「おやぁ?なんだいミズキチ。客人をいじめてたかい?」
「ち、ちちちち違いますよ店長!!というかどこ行ってたんですか!?」
「ハッハッハ、少し散歩さ。冗談はさておき対応ありがとう……ここからは私が引き継ぐよ。君は店番に戻ってくれ」
のらりくらりと笑いながら瑞希の問い詰めを交わす少し跳ね気味の黒い髪に紫の透き通る様な瞳、175cmは超えている細身の男性……この人こそ骨董店の店主の夜守 律だ。
彼が戻ってきた以上瑞希の対応はそこまでだ。瑞希は大人しく律に聞いた話を伝え交代し店番に戻る。
それからは特に変わった様子もなく、店の奥で男性客と律の会話は問題も滞りもなく続けられている様だったので瑞希は気にするのをやめていつも通り黙々と仕事をこなしていく。
「本当にありがとうございました……」
泣きながら律に感謝を述べ人形を持ってきた男性客は帰って行った。律はその人形の布を解きしっかりと鑑定していたそんな時。
瑞希の視界がグラリと揺らぎ気が付けば天井を見上げ、強い眠気が襲い意識がどんどん遠のいていく。
何か声をかけられている気がするが、それすら理解出来ないまま信じられない程深い眠りに落ちていく。
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