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”第一章”一話目
「ミズキチ!!瑞希!!聞こえるか!?」
突然目の前で倒れた瑞希に声を掛ける律だがどう見ても彼にもう意識は残っていない。
「……くっそ、成る可くミズキチには禍つ物に近付けない様にしていたのだが……よりによってこの人形に触れてしまったのか」
瑞希の身体を運びながら律は唸る。律の目には瑞希の身体に黒いモヤから作られた鎖がまとわりつき縛り付けているのが見えていた。
この店は律が作った訳では無い。親や祖父、その前など律の先祖等……多くの者が営んでいたものを受け継いだのだ。
「古い物というのは多くの時を過ごし、多くの物を見てきます。故に丁重に扱わねばなりません。その中でも人形というのはとても力を持つものです。良くも悪くも強い力を。
人の形をしているのもありますが、良くも悪くも念が宿り易いのです……か。あーヤダヤダ。本当に早く手を打たないとミズキチ死んじまうよ……」
『お前がフラフラ散歩に出てるからだろリツ〜』
ぶつぶつと独り言を呟いていた律に誰もいないはずの骨董品店の中から空室の中で声を出し反響している様な奇妙な声が響いてくる。
その声は反響して感情や思惑は聞き取りにくいが、何処と無く呆れた様でありながら揶揄う様な色を帯びているのは間違いない。
その声を聞けば律はうんざりしたような顔で鏡の方角を睨み付けて押し黙る。
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