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序章
都市発展が少しずつ始まり、何時潰れるかも分からないような古びた骨董店、夜守骨董店。
そこで働いているのはたった2人。店主の夜守 律と物好きアルバイトの信乃 瑞希。
瑞希は名前こそ女らしいが心身共に男性だ。茶色い緩めの天然パーマに猫っ毛に琥珀色の瞳、168cmの身長に細くもなく太くもない……パッと見は特徴のない男だ。
瑞希は昔から古い物が好きで骨董品店に通ったりしていた。その延長で彼は働きたいと申し出てきたが……潰れ掛けのこの店に瑞希を雇う余裕も理由も無いはずなのだが二つ返事で雇って貰えた。
店主曰くこの店は趣味でやってる範囲であって、別にこの店で稼げずとも骨董品店を最低限維持さえできれば頓着が無いらしい。
だが彼には口癖があるのだ……『古い物というのは多くの時を過ごし、多くの物を見てきている。故に丁重に扱わねばならない。』瑞希はその言葉に惚れ込んでこの店を選んだのだ。
そんな店主は口は達者だが気紛れな為ふらふらと出掛けて帰らないことはよくある。今日もそんな一日で瑞希はただ1人毛ばたきで骨董品の埃を落としていると店の入口から声が響く。
「すみませぇん。何方か居ませんかぁ」
「はぁーい」
瑞希は特に慌てることも無く、出向いていく。こんな事もよくあるのだ……そもそもこの潰れ掛けの骨董品店に来る人の方が稀有なのだが。
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