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百数える前に姿を現したのは、叔父上と元服したばかりの年頃の若い武士姿をした騰蛇である。
「影縄久しぶりー。俺らと離れて寂しくなかった?」
「数日離れたことで寂しいなどと言っていられませんよ。騰蛇、貴方はお変わり無いようで」
素っ気ない会話にも思えるが、影縄殿は身内に再会したことで心なしか嬉しそうだった。
「ところで…………そこの青龍殿はどうして俺を睨んでいるのかな。俺何もやってないんだけど」
「何故貴様が来るんだ。目覚めて最初にあった同胞が貴様など最悪の気分だ」
そういえば騰蛇と青龍はあんまり仲が良くないと聞いたことがある。それにしても龍藍殿には外見の年相応な反応だったのに、途端に大人びた怖い顔になっている。
「だってこの周辺にいる同胞は俺ぐらいだし。ちょっと心配して見に来たのにあんまりな態度じゃないか」
「貴様に心配される覚えはない。さっさと帰れ」
「頭領とお前達の護衛として来たのだから一人では帰れない。そこのところ青龍殿はお分かり?」
「貴様………!」
青龍と騰蛇の口喧嘩が始まる。叔父上と影縄殿はまた始まったのかという顔をしているが、龍藍殿は初めて見る青龍の様子にただただ驚いていた。この口喧嘩を放置してたら夕方になってしまう。
「騰蛇、相手をおちょくのもそこまでにしろ」
「青龍、怒るのはちょっと我慢してくださいね」
青龍と騰蛇は互いの主に窘められて口喧嘩を止めたが、バチバチと火花が出そうな程にらみ合いをしている。そんな二人の間に挟まれて歩く綾人はどっと疲労が溜まっていく気がした。…………青龍って水行っぽいが木行だよな。騰蛇とは相生で爬虫類仲間?な筈なのに何で仲が悪いのだろう。考えても分からないし本人達に聞いては火に油を注ぐだけである。龍藍殿と歩く銀雪が羨ましいと思っている内に、城下に着いた。
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