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第一章 転機
「なんのご用でしょうか」
榴は質素だが大きなデスクに腰かけている男をじっと見ている。
「まさか、一人で暴力団に文句を言うとはね。君は肝が据わっている」
「ご冗談を」
「そんな君に聞きたいことがあったんだ。どうして、銃器のことを勉強している?」
「自身を守るためです。知識だけあっても、実際に銃器を扱わなければ、意味がありません」
眉をしかめながらも、彼女はそう答えた。
「実際に撃ったことは?」
「高校受験合格のご褒美だということで、入学前に両親とアメリカにいき、射撃場で三か月ほど父から様々な銃器の撃ち方を教わりました。帰国してからはモデルガンで練習をしていますが、少々勝手が違います」
「君が本物の銃器を扱えるようになったら、私はこの学校の用心棒を任せたいと思っている」
学園長は机の上で手を組んで言った。
「用心棒ですか? 一人で学校中を見回るのはできませんよ」
「そうではないよ。現在、うちの校門で堂々と生徒らが暴力を振るわれたり、暴力団が占拠していて生徒が校舎に入れないなど、トラブルがよく発生している。君にあまり負担をかけないよう、配慮はするつもりだ。引き受けてくれたら、トラブルを回避、解決、あるいは巻き込まれた生徒の保護などを卒業の条件としよう」
「あくまで、私が本物の銃器を扱えるようになったらという条件ですよね。しかし、触れる機会がない以上、お受けできません」
「そうすぐに決めなくていい。帰ってお父上に話してみなさい」
「……分かりました。では、失礼します」
「ただいま、母さん」
「おかえり、今日の学校はどうだったの?」
「いつも通り、楽しかったよ。父さんは?」
「まだ帰ってないわ。でも、夕食のころには戻ってくるって」
「分かった。部屋にいるからなにかあれば呼んで」
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