3人が本棚に入れています
本棚に追加
――なにが大丈夫よ! 平気なわけないじゃない! そうじゃなかったら、あの子の笑った顔が、今にも泣きそうなのを堪えてるように見えるはずないでしょ! 榴のバカ!
廊下を歩きながら、内心で言葉を吐き出していた。
深呼吸をして、ふと足を止める。
振り返って図書室を見て、彼女は言葉を紡いだ。
「もう、あんな思いをしたくないのは分かるよ。私も同じ」
――だけどね、榴。……どうしようもないくらいに傷ついたのに、それを癒そうともしないで……。どうして普段通りにしていられるの……? ただでさえ、ボロボロなのに。それを必死になって隠す理由はなに? せめて自分の親くらい、いい娘を演じるんじゃなくて、素直になりなさいよ。私といるときだけじゃなくてさ。それに、今のあなたは、あのとき以上に辛い思いをするような気がする。そんな必要はないのよ……。
玲衣は内心でそう思いながら、窓に視線を向けた。
その頃、榴はというと早めに切り上げて教室に戻り、授業の準備をしていた。
彼女は玲衣に言われたことを考えていた。途中で遮ったから良かったものの、その通りだった。誤魔化せるはずがないと分かっていても、そうせずにはいられなかった。自覚をしながらも、あえて考えないようにしてきた。一度考えてしまえば、そこから抜け出せないような気がしていたから。
――なんで今さら、こんなこと考えたんだ。
溜息を吐いて、それを振り払った。
最初のコメントを投稿しよう!