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待ちに待った約束の日、榴はどこにいくかも聞かされず、父親の後をついて行った。疑問に思いながらも、なにも言うなとの父親の一言で口を噤んでいた。
「途中で逃げることは許さんからな」
「うん。逃げないよ」
そう言って笑顔を見せた。
「その意気だ。……そろそろ着くぞ」
「ここ、ガンショップ? 広―い! あ、ライフルに、ショットガンだ! かっこいい!」
後に続きながら歓声を上げた。
「まったく、可愛い娘が、こんな物騒なモノを見て顔を輝かせるなんてな。考えもしなかった」
「可愛いって……。その言葉、聞きたくない。女らしさの欠片もないけど、私はこれでいいの。いかにも女子です、って感じの服は大嫌いだから」
「分かってるよ。ぱっと見たら男と勘違いされるかもな」
「かもね」
その言葉に思わず笑みを浮かべた。
「少しは緊張がほぐれたようだな。さて、ここでまず銃器の扱いを教える」
父親はそう言いながら、ガンショップの奥へと入っていく。その奥には射撃場があった。
「ここで……。ホント、凄いや。でも、父さん。ここ、使って良いの? それに本物の銃器は扱えないはずでしょ?」
「ここは父さんと同じように引退した同期が経営してる店だ。事情を話したら貸してくれたよ。店ではもちろん扱えない。でも、引退した奴らに声をかけたら、実際に使ってほしいってことで多くの銃器を譲ってもらったんだ」
「分かった。じゃあ、なにから始めるの?」
「そうだな……。ちょっと、このリヴォルバーで試しに撃ってみろ。当たらなくてもいいが、的を狙うことだけはしてみろ」
その言葉を聞いて、父親に渡されたリヴォルバーを見る。黒一色で、銃身はそれなりに長さがある。懐に納めるほどコンパクトではない。腰に吊るのが一番だろう。ずっしりと重みがある。
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