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友よ。君もこの嵐には遭っただろうか。
身を包み泳いでも泳いでも逃れられない熱気を飲んだだろうか。
熱に埋もれた風のそよぎを聞くことができただろうか。
君はそれらの中に、微かでも私を見てしまったのか。
その気持ちを、私も、あるいは分かるのかもしれない。あの三年間を、これまでの道のりで最も凝縮された感性を抱えていたあの頃に、同じ目線で見てきた君ならば。
あらゆる音を遮っていた雨足が通り過ぎていき、再び蝉が謳歌し始めた。
振り向けば雲が唸りを上げながら、まだまだこれからとばかりにのしのしと山の方へ歩いていくのが見える。
凄まじい雨の中も折れずにいてくれた傘を畳んで雨を払うと、雲間から覗いた太陽にキラキラと光が零れたように見えた。
飲み込まれそうな雨の中、私は一つ思い出していた。
あの日も、ちょうど教室の窓の外は妙に明るい空が雨を叩きつけていた。帰るタイミングを逃し、友人と二人で豪雨が過ぎ去るのを待っていたときだ。
溶けてしまいそうだ、と友人は呟いたのが聞こえた。窓を越えてくる雨の音に消されてしまいそうな微かな呟きだった。
ただ、何が溶けてしまいそうだったのだろうかとその時の私は考えていて、うまく返事が出来なかったのを覚えている。
それでも、私は友人の名前を呼んだ。気の利いた言葉など思いもつかなくて、しかし、雨音に消されそうな友人の横顔をそのままにはさせておけなくて、名前を呼んだのだ。
私を振り向いた友人の表情は、驚いているようにも安堵したようにも見えた。
背負っていたバックパックの頭からアイボリーの封筒を取り出した。
幸い濡れてはいないようだ。差出人の住所はハッキリと、青い蔦が示している。
駅からそう遠くはない。名勝地である断崖絶壁、……の、手前。
カフェ『あどりあの』。
通称、─── この世の最期の砦。
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