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その友人とは、友人という以上に親しくあった。少なくとも、私の中ではその人はそういう立ち位置だ。
だが、これを知り合いに話すとどうも感覚がずれるようである。いわく、それほど仲の良い間柄であれば、もっと頻繁にやり取りをするだろう。
そう言われると確かに、と思うところもある。思い出してみてもその友人とSNSはおろか手紙のやり取りも電話の一つも交わしたことはない。
私としてはたとえそうであっても、たった一言「助けてくれ」と言われたら何をおしてでも真っ先に駆け付けただろう。
だが知り合いの反応を見るに、もしかしたらその友人の中では、私は多くの友人の中の一人でしかなかったのかもしれない。
友人の最期を悔やまなかったわけではない。だが、友人は結局のところ一度も私に連絡を取ることもなく、私も友人は順調な人生を進んでいるのだろうと確かめることもなかった。
気にならなかったと言えばそうなるだろう。ここを私が何とも言ったところで、周りから見れば私は「親友」というには薄情であるのだそうだ。
「あいつから何か相談されなかったのですか」
おそらくは、その『友人の中の親友』と呼ばれるだろう人に、私は些か責められるように問い詰められた。
『親友』が私へ詰め寄るのも仕方ない。彼は、ただ悲しかったのだ。友人が亡くなった理由を彼は知りたかったのだろう。
だが、申し訳ないことに、私は友人の報せもその『親友』から聞かされて初めて知るところだったのだ。
私が首を振ると、彼は苦々しげに顔をしかめた。
そう言えば、なぜこんな長いこと連絡も取ってない自分へ『親友』たる人物が声を掛けたのだろうと不思議に思い尋ねた。
すると『親友』は更に眉を寄せて言ったのだ。
「あいつは、事あるごとにあなたのことを話していたんです。
だから僕は、ずっとあいつとあなたはやり取りがあると思っていたのに」
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