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 丁寧に糊を敷いた手紙は、それから飛び石のような間隔でポストに収められた。  知らぬ人の手で綴られた手紙の中で、友人が私との思い出話を語っている。懐かしい話ばかりだ。  友人との付き合いは高校の三年間を一緒に過ごしただけだった。地元も違えば進路も違い、私達の交差点は高校をおいて他になかったのだ。  あの三年間の密度は、何に例えられようか。  煮詰められた砂糖の濃度に近く、圧縮された固形炭酸(ドライアイス)の虚ろにも似ている。思い出せば、本当に存在していたのか疑わしいおとぎ話のようだ。  私と友人の中でしか存在しない、そして友人がいなくなってしまった今、私が忘れてしまえば根拠を失ってしまう事実であった。いや、もう私一人ではその形をどこへも投影できない。影を見ることすら叶わないのではないだろうか。  こうして、友人ではない誰かの手で友人を語られなければ。
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