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「いいよ、約束する。希子がおれを必要とするときは好きなだけそばにいてあげる。だから、おいで」
ふっと息を漏らすと、希子が一直線におれの腕に飛び込んできた。
おれが抱きとめるよりも先に、希子がおれの背中に腕を回してしがみつく。
「ユキちゃん、あたしのこと好き?」
「大好きだよ」
「あたしもユキちゃんが大好き」
希子の「大好き」なんて、どうせその場限りの嘘のくせに。おれの「好き」とは違うのに。
満足そうに笑う希子の顔を見たら、おれは結局全部を受け入れてしまう。たとえそれが、嘘にまみれていても。
「ユキちゃん、あったかい」
苦笑いを浮かべるおれの胸に、希子が甘えるように頬を擦り寄せてくる。
「希子がいつも冷えてるだけじゃん」
「ユキちゃんにあたためてもらうためだよ」
希子の言葉に舞い上がりそうになる気持ちを押さえて、無言で奥歯を噛む。
機嫌良く甘えているときの希子の言葉は、特に調子がいい。どうせほかの男にも似たようなことを言ってるんだろう。
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