それが嘘まみれの愛でも

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 その冬のできごと以来、おれと希子の距離は急激に縮まった。  女友達のいない希子は、休み時間や放課後になると一番におれのそばに寄ってきた。  希子の家庭事情はよくわからないけれど、彼女は駅の近くの高層マンションにひとりきりで住んでいた。 「淋しい」と呼び出されば会いに行ったし、彼女が眠れない夜は長電話にも付き合った。 「ユキちゃん、あたしのこと好き?」  淋しさを紛らわせるためか、希子はときどき不安そうにおれを見ながら問いかけてきた。 「好きだ」と答えれば満たされた表情をする希子に、おれの気持ちは徐々に傾いていった。  だから、希子に求められれば抱きしめてキスだってした。  希子に問いかけられて「好きだ」と言うと、彼女も「あたしもユキちゃんのこと好き」と笑う。最初はその言葉が嬉しくて、本気にして浮かれていた。  だけど希子はおれを「好きだ」と言いながら、誘われれば他の男に簡単に流された。  おれの腕の中で一時の淋しさを埋めた翌日に、別の男と平気でキスできた。  あの冬のできごと以来、おれは希子のいちばん近くにいたけれど、彼女の淋しさはいつまで経っても少しも埋まらなかった。  高校を卒業するまでにおれができたことといえば、希子がもう二度と窓枠を乗り越えたりしないように、なるべくそばにいてやることだけだった。
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