それが嘘まみれの愛でも

9/15
前へ
/15ページ
次へ
「じゃぁ、あの、ときどき連絡とかさせてもらうかも……」 「うん」  言葉を詰まらせながら一生懸命話す青山さんに笑いかけたとき「ユーキちゃん」と呼ばれて、後ろからグイッと腕を引っ張られた。 「ユキちゃん、昨日はどうして来てくれなかったの?」  腕を絡めながら下からおれの顔を覗き込んできたのは希子で。ベタベタと必要以上におれに纏わりつく希子を見て、青山さんが顔をひきつらせていた。 「希子。今おれ、青山さんとしゃべってる」 「あー、そうなんだ」  希子がちらっと視線を向けると、青山さんの表情が強張る。 「ご、めんね。私はもう用事終わったから。橋元くん、また」  青山さんが泣きそうに笑って、おれに手を振ってから去って行く。  今の連絡先交換は無駄になったかも。そう思いながら青山さんの背中を見送っていると、希子がおれの腕を引っ張ってきた。 「あの子、よくユキちゃんのこと見てるよね」 「さぁ、そうなんだ」 「ユキちゃんが呼んでも来てくれなかったのは初めてだよね。何度も連絡したのに、どうして電話に出なかったの? もしかして、昨日来てくれなかったのはあの子のせい?」  まるで青山さんに嫉妬しているみたいに不貞腐れている希子に、少しイラついた。  昨夜、切羽詰まった声でおれのことを呼び出しておいて、他の男とキスしてたのは希子のくせに。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加