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「じゃぁ、あの、ときどき連絡とかさせてもらうかも……」
「うん」
言葉を詰まらせながら一生懸命話す青山さんに笑いかけたとき「ユーキちゃん」と呼ばれて、後ろからグイッと腕を引っ張られた。
「ユキちゃん、昨日はどうして来てくれなかったの?」
腕を絡めながら下からおれの顔を覗き込んできたのは希子で。ベタベタと必要以上におれに纏わりつく希子を見て、青山さんが顔をひきつらせていた。
「希子。今おれ、青山さんとしゃべってる」
「あー、そうなんだ」
希子がちらっと視線を向けると、青山さんの表情が強張る。
「ご、めんね。私はもう用事終わったから。橋元くん、また」
青山さんが泣きそうに笑って、おれに手を振ってから去って行く。
今の連絡先交換は無駄になったかも。そう思いながら青山さんの背中を見送っていると、希子がおれの腕を引っ張ってきた。
「あの子、よくユキちゃんのこと見てるよね」
「さぁ、そうなんだ」
「ユキちゃんが呼んでも来てくれなかったのは初めてだよね。何度も連絡したのに、どうして電話に出なかったの? もしかして、昨日来てくれなかったのはあの子のせい?」
まるで青山さんに嫉妬しているみたいに不貞腐れている希子に、少しイラついた。
昨夜、切羽詰まった声でおれのことを呼び出しておいて、他の男とキスしてたのは希子のくせに。
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