一人旅をしてきなさい

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一人旅をしてきなさい

 「なんでこの私がわざわざ福岡まで行かなきゃいけないのよ?!」廣瀬家の社長令嬢、真子(まこ)は憤慨していた。  「真子様、隆志(たかし)社長からのお言付けでございまして…。かわいい子には旅をさせるのが一番だって、おっしゃっておりました。」  「はぁ?!意味わかんない。私はひとりで飛行機乗るのなんて嫌だからね。あなたがついてきてよ。」  召し使いの芽衣(めい)は困り果てていた。社長から娘の真子に福岡までひとり旅をするように言っておいてとお願いされ、飛行機のチケットを渡されたものの、真子は芽衣がついていかないと嫌だと言う。社長令嬢の真子は今まで近所の買い物ですらひとりで行ったことがない、まさに"箱入り娘"だった。  「あなた召し使いよね。お金払えば言うこと聞いてくれるわよね。そしたら私が1人旅していることにして、こっそりついて来るってのはどうよ?」  「真子様そう言われましても…もし社長様に知られた時に大変なことになります。」  「それはその時よ!いいの、私の言うことを聞いて!」  真子は芽衣をそう言って突き放すと、自分の部屋へ戻っていってしまった。この件はどうやってまとめたら良いのか…。芽衣はひとつ、大きなため息をついた。  翌日、芽衣はチケットの封筒に同封されていた、行くとこリストを見ていた。もちろん、真子がひとりで行く体になっている福岡旅行の行くとこリストだ。  「博多の屋台か…。ラーメン屋さんて書いてあるけど、真子様の口に合うのかな…?」  芽衣はひとり言をぶつぶつと呟きながら、インターネットで博多の屋台について調べた。どうやら「中洲」という所に飲食屋台がずらりと並んでおり、そこの店舗に行くように書いてある。  「なんでこんなところに真子様を行かせるのかな。」芽衣は少し不思議に思ったが、そこまで気にすることでもなさそうだったので、行くとこリストを元々入っていたチケット封筒にしまった。
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