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小さくうずくまる私の前へ、ルプリが素早く飛び出して両手を広げる。
「待て待てスライムども!」
「「おっ姫様、おっ姫様」」
私とルプリの周りを囲んで飛び跳ねる笑顔のスライムに悪意は感じなかった。むしろ私に会えて嬉しそうに感じた。
「ス、スライム……ちゃん?」
「「はぁーい!!」」
胸の奥がキュンとなった。赤、緑、水色のスライム達が私の周りを楽しそうに飛び跳ねる。そのスライム達に愛着がわくのに時間はかからなかった。しゃがみこみ両手を広げると、スライム一体が飛び込んできた。
ふにふにしてさわり心地ちがいい、
「最弱なんかじゃない!」
「痛っ」
和やかな雰囲気の中、背中に軽い衝撃を受けた拍子に抱き抱えていたスライムを落としてしまう。
「え? 何?」
「最弱なんかじゃない! 取り消せ」
後ろを振り返ると、目付きの悪い灰色のスライムがこちらを睨んでいた。
「「あー、色無し無しちゃん、いけないんだー!」」
周りのスライムが一斉に叫ぶ、
「貴様! このお方をどなたと心得るか!」
走ってきたルプリがすかさずスライムを掴み上げる、だが灰色スライムはスルリと腕から抜け出し、地面に着地するや否やまたもや私のお腹にめがけて突っ込んでくる。
「痛っ……くは、ないね」
条件反射でつい「痛」と、言ってしまったものの、この辺りがやはり最弱と呼ばれるだけのことはある。そのまま抱きしめた。むぎゅーっと潰れてスポンジのようだった。
「はーなーせー」
灰スライムはスルリと腕を抜け出し背中に回ると、腰まで伸びる私の髪の毛の中に入った。
「きゃっ」
「スライムごときが! お嬢様から離れなさい!」
ルプリがそう叫んだ瞬間だった。熱風が吹いたと思うと、辺り一面が一瞬で火の海に包まれる。回りにいたスライム達は声を出す間もなく火の塊となってしまった。
「何?」
「お、お嬢様! だ、大丈夫でございますか?」
ルプリは大柄の体を引きずりながら私の前へ寄ってくる、焦げたメイド服、皮膚が焼け爛れ垂れ下がっている。
「わ、私は大丈夫」
「う、うかつでした……こ、れは魔法に、ございます。どこか近、くに魔法、使、いが……」
ルプリは声を途切れさせながらも、辺りを気にしている、私は彼女の頭を抱き上げ、虚ろになった目を見る。
「もういい、喋らないでルプリ、早く帰ろ」
「いや……もう、遅、いでござい、ます」
半ば諦めたように聞こえたルプリの声が私の心境を焦りに代えていく。
再び突風が吹き、炎は一瞬で消えて無くなり、燃えかすのみが残った。
「おやおや、効かないですか……」
「誰!」
がさがさと足音をさせて焼け果てた茂みから出て来たのは一人の男だった。
黄緑色のローブに三角帽子、木製の長い杖で焼けカスを払いのけながらゆっくりと歩く。
人族か――――
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