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「お父様と同じこめかみからの二本の角……魔王のお嬢様は火の属性でいらっしゃる、どおりで私の炎魔法ファイアブレイズが効かないのですね」  緑豊かな芝生、回りの木々は焼け果て、可愛かったスライムも全滅。挙げ句にルプリまでも瀕死状態にされてしまった。 「誰なの? あなたは」 「はっ、魔族に名乗る名前はこざいませんよ」  そういうと魔法使いは杖を突き出し呪文を唱える。  男の成りと物言い、そして突然の攻撃。人属の魔法使い以外にこんなことをする者はいない。体の中からふつふつと怒りが湧くのが分かる。 「今は停戦中ですよ、これだけのことをしておいて、覚悟はあるのでしょうね」 「それはこちらとて同じこと、魔王自らが四天王を連れてこの大地に来るとは、宣戦布告としか思えませんよ」  私とて魔王令嬢とはいえ多少の力は持っている。このまま殺られる訳にはいかない、ルプリを抱いているのとは逆の掌を男に向け突き出す。 「私は運がいい、悪の根元である魔王唯一の弱点、魔王令嬢がこの場にいるのだから」 「うるさい!! ファイ――――」 「お嬢様!!」  魔法を放とうと念じた瞬間、突然ルプリが私の手を振りほどいた、 「戦ってはいけませんお嬢様、これは人属の罠かもしれません、どこかに見張りがこの一部始終を記録しているはず」  ルプリは酷く焼けた肌をもろともせずにすくりと立ち上がる、まるでキズが完治したような身のこなしだった、 「しかし停戦中に攻撃を仕掛けたのは向こう」 「そんなことはいくらでも言い逃れできます、お嬢様が手を上げた瞬間、不利になるのです」 「だ、だって」  突如茂みの奥から一人の男か現れる。 「なんだよこの死に損ないっ」  小柄な男がカメラを片手に現れたかと思うと、刀を抜いて身構える。それを確認したと同時にルプリの様子がおかしくなる。 「グエ……やはりな……」 「ルプリ、あなた……」 「ここはお逃げ下さい、お嬢様」  ルプリは大きく息を吸い込むと、肌色の皮膚が裂け落ち、中から緑色の肉体が現れ、その容姿も二足歩行のメイド姿から、大きなカエルへと変化した。 「ゲコゲコッ、さあ来い! 人間ども」 「ふんっ、変身形のブートフロッグですか」  ルプリが変身したところは見たことがなかった、  「ルプリ、私も!」 「魔王様に言われております、お嬢様をお守りしなければ」 「ごちゃごちゃうるさい魔族ですね、魔族は悪。さっさと消えてもらいましょう」  私達に向かい魔法使いは杖を振り下ろす、氷の刃が無数に現れるとこちらに向かいその鋭利な先が向けられる。 「氷魔法、アイスダスト!」 「お嬢様!!」  ルプリが私の前へ立ち塞がり一気に氷の刃を体中に受ける。 「ぐっ」  噛み締めた口から血が溢れている、 「ルプリ!」  
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