咲かせた花は大切に守って……

2/7
111人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
玲奈(れな)、おはよ」 駅から高校に向かって歩いていると、後ろから声を掛けられた。 振り向くまでもない。 私に声を掛けてくる男子なんて、1人しかいない。 「おはよ」 私は、(とおる)に挨拶を返す。 私は、この春、自宅からは少し遠く、中学の友人が1人もいない高校へ進学した。 そして、そこには偶然にも幼馴染みの徹がいたのだった。 幼馴染みとはいっても、家が近所なわけじゃない。 私は、3歳からバイオリンを習っているんだけど、その同じ先生に習ってるのが徹なのだ。 私たちは、幼い頃から弦楽二重奏などで一緒にステージに立つこともあり、自然と仲良くなった。 いや、違う。 人見知りでまともに会話できない私に、人懐っこい徹が目一杯話しかけてくれたから、仲良くなれたんだ。 私の人見知りは、高校生になっても治ることはなく、入学して3ヶ月経った今も友達らしい友達は1人もいない。 毎日、バイオリンの練習のために部活動をすることなく帰る私は、部活動で友人を作ることもない。 教室でも読書か勉強をして過ごしているので、友達なんてできるわけない。 でも、その方がありがたい。 私は1人でいる方が気楽なんだから。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!