第1章 幕開け

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「私、こっちに帰ってきた方がいいかなぁ?」 廊下を歩きながら聞いてみた。 人の話すらしない静かな廊下。 『…それは俺も考えてた。俺も今実家に居ないし。お母さん一人にするのも不安だよな』 「うん。そうなんだよね」 ずっと泣いている母は見ていて痛々しかった。 私も父が居なくなるなんて想像なんてした事なかったし、愛している人が突然いなくなった悲しみは誰にも分からない。 当事者だけが分かる悲しみ…。 「私は、しばらくの間こっちに居るわ」 『ごめん。俺は…』 「ううん。春一は同棲しているもんね。私は、してないからさ」 『ちゃんと様子を見に来るから』 「ありがとう。良かった、春一が居てくれて…兄弟が居たら、こういう時支え合っていけるもんね。私一人だけだったら不安だった」 『俺も。そう思うよ』
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