第1章 幕開け

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付き合っている彼に電話をしようと外へ出た。 『そうだったんだ。依智花、今辛いよな。側に居てやれなくてごめんな』 「ううん、平気」 『俺の事は落ち着いたらでいいから』 「うん、ありがとう」 優しい彼…。本当大好き。 結婚しようって言ってくれたのに。 ごめんなさい。 今じゃないけど、きっとこの先裏切ってしまう気がする。 「また連絡するね」 心の中で申し訳ないと思いながら、その反面、武本君の事を考えてしまう私がいる。 『…姉貴。眠れないのか?』 縁側に座っていると後ろから春一が話しかけてきた。 「うん…」 春一は私の隣に座ると、『俺も』と静かに言った。 「お母さんは?どうしてる?」 『横になってるけど、寝てないと思う。なぁ、姉貴?』 「何?」 『姉貴一人で大丈夫か?』 「え?」 私は春一の顔を覗き込むと、春一は顔をしかめている。
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