第1章 幕開け

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『いや、俺や皆が帰った後、残るのは姉貴だけじゃん?俺もたまに帰って来るけどさぁ』 私は、ふっ…と笑って、 「私は大丈夫。大丈夫よ」 と言った。 本当に大丈夫だと思う…。 私は大丈夫。 私は、母の側に居る事を決め、独断で退職願を出した。 もちろん、何も言わなくても春一は分かってくれたし、周りも「その方が良い」と快く言ってくれた。 こっちで仕事を探せばいい…。 今は母の事が心配だった。 父が亡くなった日からずっと寝たきりの生活だった。 「お母さん?」 パジャマ姿で布団に入っている母に一口サイズのゼリーを渡す。 「少しでいいから…ね?」 母はゼリーを無言で受け取ると一口で口に入れた。 『もういい…』 「うん、分かったよ」
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