第1章 幕開け

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今日は春一が泊まりで来てくれる日だった。彼女が研修(確か医療関係だったと思う)で1ヶ月程居ないから、と何日間か居てくれる事になったのだ。 『ただいま』 「おかえりなさい」 春一は13時頃に来て、まず父の遺影がある部屋に向かった。 『お父さん、久しぶり…って言っても、まだそんなに経ってないな』 そう言い手を合わせた。 『俺やっぱりさぁ…お父さんが居ないと淋しいよ。あれだけ嫌がってたのに。居なくなってから気付くなんてな』 と、話しかけ始めたので、私はその場から離れた。 やっぱり淋しいと思うよなぁと春一の後ろ姿を見て思った。 私達姉弟は父の存在が嫌だった。 これは二人で時々話していたのだが、「人の気持ちを考えない、自分が一番の人間」が父だったのだ。 悩みがあっても母にしか言えないし、言うと「自分でやれ」しか言わなかった。
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