第1章 幕開け

20/32
前へ
/95ページ
次へ
「うん、居るよ」 俺は、母の手を握った。 少しだけ温かいことに安心した。 『良かった。じゃあ、また後でね』 「うん」 ドアを閉めた後、俺は声を殺して泣いた。 涙を止めようと思っても止まってくれない。 情けなかった…自分が無力な事に。 姉貴が前に言っていた。 『私、何もしてあげられない』 電話で泣きながら言った言葉。 俺は、「大丈夫だよ。お母さんの側に居てあげるだけでも。俺、姉貴の事信頼してるから」ってあの時言ったんだ…。 何が「大丈夫」だ。 姉貴は母のあの姿を毎日見て心を痛めていたというのに… 俺は全部任せっきりで…。 これからは、姉貴の負担にならないよう俺も何かしなきゃな…。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加