第1章 幕開け

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春一が用意してくれた夕食を食べ終えると、先程もらったスケッチブックを開いた。 そこには『声に出さないで』と春一の字で書かれていて、その後に 『久しぶりにお母さんの姿を見られて良かったけど、姉貴の言うとおりだった。見ていて辛かった…ずっと姉貴に任せっきりですまなかった』 と書かれていた。 『私は平気だよ。お母さんは、よっぽどショックが大きかったんだろうね』 私は、その場にそう書いて見せた。 私だってショックだった。 でも、それは数日だけの事だった。 実際、今心の中を占めているのは、武本くんの事だから。 『俺、もう部屋戻るけど何かあったら呼んで』 「うん、ありがとう」 母が寝たきりになってから寝室に近いこの居間に居るようになった。 ドアがあるが、開けっ放しにしている。 私も春一も部屋は2階なのだけれど、"何か"起きたらすぐ分かるように、私はこの居間で寝ている。
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