第1章 幕開け

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あの時、お弁当箱をどこで買ったのか武本くんに聞く勇気なんてなかったから、お弁当箱が売っている店を全部探した。 『依智花。どうしてこのお弁当箱じゃダメなの?』 高校に入学してから母と一緒に買いに行ったピンク色の二段重ねのお弁当箱を洗いながら母が言った。 『この花とハートが可愛いって言って買ったのにぃ…』 母の残念そうな顔は今でも覚えている。 「だって、武本くんと同じお弁当箱が良いんだもん!!」 私は自分で買ってきたお弁当箱を母に見せた。 やっと…2週間かけて見つけたステンレスのお弁当箱。 色も形も武本くんのと同じ。 『好きな人と同じ物を持ちたいっていうのは私も分かるから、明日からそれにご飯入れてあげるね』 「ありがとう。お母さん」
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