第1章 幕開け

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…毎日嬉しかった。 武本くんは私のお弁当箱に気付いていなくても、お弁当箱で武本くんと繋がっていられるような気になっていたのだ。 麦茶を全部飲み終えると春一が玄関に行こうとしていた。 「行ってらっしゃい。お弁当ありがとう」 『おう!行ってきます』 春一を見送った後、私は重大な事に気がついた。 「お母さんは、お弁当箱の事覚えているかも」 思わず口に出た後、足早にキッチンへ戻った。 母が覚えていたら、思い出して辛くなるかもしれない。 お弁当は母に気付かれないよう急いで食べた。 思い出を覚えているのは私一人でいい…。
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