第1章 幕開け

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『あ、依智花。お待たせ!!』 声がしたので目線を上に上げると待っていた友達…梨代那だった。 やっぱり…来たのは1時間後…ではなく、2時間後だった。 小説を読んでいたから気にならなかったけど。 「相変わらず、可愛いのぅ…」 私は久しぶりに会った梨代那の顔と服装をまじまじと見た。 パーマがかかった焦げ茶色の髪に右にリボンのコサージュを付けて、白いブラウスにサーモンピンク色のカーディガンを羽織り(カーディガンのボタンはリボンの形!?)、フリルやリボンが付いたふわふわのスカートを履いている。 『そんなに見つめないでよ』 「ごめんごめんっ。つい」 梨代那が私の前に座ると店員が来たので、『私はミルクティーで』と梨代那は伝えた。 『大変だったね、依智花』 「うん…もう、大丈夫だけどね」 『そんな強がらないで』 「いや…もう、本当に大丈夫なのよ」 父の死が辛かったのは本当だけれど、それ以上に武本くんに会えた事の方が印象強かった。 なんて、そんな事口が裂けても言えないけれどね…。 『なら良いんだけど』 「梨代那も元気そうね。前に話していた彼とは順調?」 梨代那は『えへへ』と目尻を下げて笑い、左手を見せてくれた。薬指には指輪。 「え、プロポーズされたの?」 『うん』 前…会って話を聞いた時は『結婚前提に付き合っている彼が居る』って言っていたけれど、そっかぁ…プロポーズされたんだぁ…。
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